転職エージェントインタビュー:当たり前のことを当たり前にやる

砂田 丈資(すなだ たけし)
ディレクター/転職エージェント
1966年生まれ

高校時代の夢は「自動車のエンジニアになること」。大学進学時、自動車の機械設計のエンジニアを志望し工学部を受けるも失敗、文系学部に進んだ。それでも自動車業界に関わりたいと考え、卒業後は法人向けの自動車販売営業の道へ進む。その後、自身で10年後20年後を考えながら、転職を行い、大手人材紹介会社で転職エージェントとして活動していた。アルプスキャリアには立ち上げ前から関わり、土壌を築いた後、長年培った転職エージェントの経験を後進に伝えながら、自身も一線で活躍している。

「一番嬉しいのは、転職をサポートさせていただいたかたが活躍していることを知った時です」、そう語る砂田さんに“転職”観や転職を成功に導くポイントなどを伺った。

1. 自身も“エンジニア”を目指していた
転職エージェント

——まず、アルプスキャリアについて教えていただけますか?

砂田:弊社はアルプス技研が2012年8月に立ち上げた人材紹介会社です。コンセプトは「“技術”に携わり、知識や経験の深いエージェントがエンジニアを紹介する」。私は立ち上げ前の7月に入社し、本格的に事業がスタートした12月からは転職エージェントとして活動しています。

——砂田さんが転職エージェントを目指すきっかけを教えていただけますか?

新卒の時には実力で評価される会社を探していました。元々自動車のエンジニアを目指していたこともあり、自動車販売会社最大手で法人向け営業職を担当。7年ほど営業の経験を積んだ後、「営業を管理する側を経験してみたい」と考え転職。人事や経営企画、総務など幅広く担当させていただく中で人材紹介会社のかたとの繋がりから、“人材紹介サービス”への道を意識するようになりました。

「エンジニアになりたい」は子供の頃から考えていました。しかし、結果的に違う道へと進んで来てしまった。人材紹介エージェントなら、私と同じ夢を持つかたをサポート出来ると考え、技術系に強い人材紹介会社に転職。2000年に入ってから終身雇用は崩れ、転職市場が右肩上がりになっていました。盛り上がっているとは言え、景況感もありエージェントも良い時ばかりではありませんでしたが、おかげで多くの仕事に悩みや希望を持つエンジニアとお会いし、サポートができたことを嬉しく思います。

アルプスキャリアに声をかけて貰った時、技術に重きを置いた人材紹介会社だったこと、私の経験や力が生かせる場があったことはもちろんですが、私のビジネスに対する希望に合致していたため、すぐに入社を決めました。

2. 入社することがゴールではない
“成功”する転職とは?

——転職エージェントのやりがいとは何ですか?

砂田:月並みですが、紹介したかたが活躍していると話を聞くことでしょうか。 私が過去に担当したかたに、高い技術を持っているが会社の昇進システムが自分に合わないため、転職を考えたかたがいらっしゃいました。収入ではなく、「もっと技術を磨きたい、作って行きたい」、その希望をお手伝いさせていただいた結果、ご紹介した企業の担当者から「紹介してくれたかた、生き生きと仕事をされています」とか、ご本人から「自分のやりたい仕事ができているよ」と言っていただけることが何より嬉しいです。

転職を考えるかたの理由はさまざまです。「収入が少ない」、「希望通りの仕事ではない」「休みが少ない」。しかし、その理由では転職は成功しません。転職は入社することが成功ではなく、自分の力を生かせる場を見つけることが成功ではないでしょうか。

新しい会社に入り収入も上がった、しかし休みがとれなくなった。会社から自分の力が生かせる場を提供されないかもしれない。まるで助っ人外国人のように「実績をいますぐ出せ」と迫られ、思うように自分が描いた仕事をできないこともあるのではないでしょうか。こんなことなら「転職なんてるすべきじゃなかった」と思ってしまいますよね。

私の夢はエンジニアと言いましたが、それを実現し活躍している方々を私はお手伝いしたい。お手伝いする上で、大事にしているのは「当たり前のことを当たり前にやろう」。最終的に決めるのは本人たち、私は転職希望者の話を聞きこの人はどうやったら成功するのか、クライアントはどう考えるのか、そこを真剣に考えてアドバイスをするだけです。

私の真剣を受け止めて、真っ正面から捉えてくれたかた、皆さん第一線で活躍しています。皆さん“成功”を勝ち得た方々ばかりです。

3. 一見大したことではない
しかし必ず役立つ情報を伝える

——砂田さんが考える転職を成功に導く必須要素はありますか?

砂田:よく勘違いされることなのですが、企業は「やりたいことがある人」ではなく、「やれる人」を求めています。企業の希望に応えるのはもちろんですが、ご紹介したかたが入社した後、やっていけるかどうか、そこが転職で最も重要かつ私たちが気を遣う点です。

技術や能力は高いのがわかる、でも本当にこの人と一緒にやっていけるのかな、企業の担当者も一番気にしている点です。今まで取得した資格、経験した技術は応募の最低条件だと考えても良いです。一番大事なのは「人柄」、これに尽きます。

——先ほど「当たり前のことを当たり前にやる」と仰っていましたが、具体的に転職の相談を受けて、どのような対応、アドバイスをされているんですか?

砂田:よく言われる履歴書の書きかたや面接での受け答えの仕方、実はさほど重要ではなく、基本の基本です。私が重要だと考えているのは、企業の採用担当者、応募している希望者、ともに抱いている“不安”をどう払拭するか。

履歴書を見ればどんな資格を持っており、経験を持っているかたなのかがわかりますよね。応募の理由も書いてあるので、「何をやりたいと考えているか」もわかります。希望者も求人票を見ているので、年収の想定額もわかりますし、会社が求めている人材、資格もわかります。私が間に入らなくても「わかる」情報なんです。

しかし、お互いがどういう人間か、雰囲気を持っているのかは知りません。一見関係なさそうですけど、「今度の希望者さんは背が高く、大学生と高校生のお子さんが二人います。」、「この会社は受付が暗いですが、節電対応をしているだけです。社員のかたがたは明るいですよ」、こうした情報を伝えることで、お互いがイメージできますので、面接に関する不安は払拭されます。折角お互いの希望がマッチしているのに、こうした些細な“不安”で失敗して欲しくありません。

大したことではないんですけど、実はそれこそが大事なこと、当たり前なことではないでしょうか。

「人間関係」が転職の理由だった場合も同じです。周りが自然に自分に合わせてくれることを待ったり、振り回されたりするのではなく、自分から周囲に影響を与え、周りが合わせてくれるよう状況をつくりだすくらいでないと難しいです。道を示してくれる人はいないと意識し、自ら道を見出す。それが転職はもちろん、仕事にも良い結果を生む土壌になるのではないでしょうか。転職は逃げ道ではなく、自分が“選ぶ道”なんです。

社長から見た砂田さんとは?

——一緒に働いて砂田さんの魅力はどのような点だと感じていますか?

社長:交渉力に優れた人物だと感じています。砂田も言っていた「関係はなさそうだけど、不安を払拭するための小さな情報」、砂田の働きかたから私たちも気付いた点です。自分がもしも転職を考えていたら、会社や面接担当者の雰囲気がイメージできる情報は助かるな。そんなことにも気付けるのが砂田の魅力ですね。

——砂田さんはどのようなエージェントでしょうか? 一言でいただけますか?

「高いマッチング力を持つエージェント」です。これは、当社全体のスローガンにもしていることですが、求人票と履歴書のマッチングではなく、“人”と“人”のマッチングを行う。

採用担当者は限られた時間で届いた履歴書全てに眼を通して、考えていかないといけません。 我々、人材紹介会社は「人を紹介する」ことだけではなく、こうした採用担当者の負担を減らすことも仕事ではないでしょうか。当社を信じて登録していただいた方々、クライアントを我々の眼で見極めて結びつける。結果、たくさんの企業へ面接に行く希望者の負担が減らせますし、採用担当者が見る履歴書の数も減らせます。

砂田が話した「当たり前のことを当たり前にやろう」、それが些細な変化、情報を読み取る彼の“コネクティング力”の源泉でもあり、砂田が希望者や採用担当から信頼していただける理由なんだと感じています。

Text by Yuzuru Yamakawa, Photo by Shingo Inomata