第2回 : 「好きなことしかやらない」

ナカヤマン。さん
株式会社ドレスイング 代表取締役社長
1974年生まれ

大学卒業後、車載機器のリーディングメーカーであるクラリオンに入社。同社で、ブランドマネージメントを手がけてきたナカマヤン。さんは、30歳で独立、自身の仕事を「戦略を軸にしたクリエイション」だと語る。

「ファッション業界を変えたい」
その思いから、孫正義氏の後継者を選抜する「ソフトバンクアカデミア」に応募、200/10,000の倍率を突破し見事に合格。外部一期生として今も残留している。マーケティングから経営理論など、幅広いビジネスに関わりながらも、「好きなことしかやらない」と少年のように率直に話す。同氏の仕事観とは、そして「好きなことしかやらない」の本意とはどのようなものか、お話を伺った。

1. ナカヤマン。さんの仕事を具体的に教えていただけますか?

僕の仕事は「戦略を軸にしたクリエイション」。肩書きはクリエイティブディレクター、デジタルストラテジスト“など”ですが、あくまでも「便宜的に用いる記号」なんです。コンサルティングと違い、理屈だけではなく目的達成や結果に対する責任を負う意味で“戦略を軸に”した“クリエイション”と称しています。具体的には、ファッションブランドやファッション誌、美容誌が「本来得られるべき“ファン”や“評価”、“利益”を得る」為のお手伝い。それをSNS、webクリエイションなどを掛け合わせて可能にします。

新卒で入社したクラリオンでは、ブランドマネージャーを担当していました。当時は、インターネットが楽しい時期。Napsterがカーオーディオの世界にも「mp3」の概念をもたらしました。同時にクラリオンの全世界戦略も“デジタル”へ。新人だった僕が“デジタル”担当に抜擢された以降、すべての新しい技術、新しいトレンドは僕が担当していました(笑)。20代は、新しいものに対応しつつ、過去から継続する「ブランド」を戦略的に活かすことに費やし、とても楽しく有意義な時間でした。

独立したのは30歳の時。実は独立して半年は全く仕事が無くて苦労しました。三日に一回は、お金がなくてコンビニのおにぎりの棚の前で立ちすくんでいました(笑)。転機は何度もありましたが、事業の中心にSNSを据えたのは一番大きな転機です。

4年前の出来事ですが、ファッション業界の中でもいち早くブログを最大活用していたマークスタイラー社のSNS戦略に関わることができました。この案件で行った「戦略を軸にしたクリエイション」は、ファッション業界内外で評価いただき、海外のメゾンブランドからもお声が掛かる様になったんです。こうしたパラダイムシフトとさえ言われた「情報の概念とマーケットの変化」の第一線で経験と実績を積み上げられたことは僕の財産です。

2. ナカヤマン。さんが仕事で大事にしていることはなんですか?

あえて表現するなら“間(ま)”です。 時間の“間”。物事の “繋がり”。人の“因縁”。マーケティングであれば“隙間(ブルーオーシャン)”。ビジネス、プライベート共に「これは好きかも!」と思ったことは節操無く本気でやってきました。例えば「この女の子が好きだ!」と思えば、それがその時の人生の目的(笑)。

目的達成までには必ず“変化”があります。洋服を買うかもしれないし、趣味を増やすかもしれないし、モテる友だちに相談するかもしれない。それが「現在」と「目的」との「間」。実は長期で見ると、その「間」にこそ意味がある。その「好きな女の子」と別れたとしても「間」は僕の中に残ります(笑)。

こうした「間」や「間の組み合せ」をロジカルに分析できるのも僕の強みです。 ひとつの山があるとします。頂上を目指すルートは一つではありません。登っている最中はキツい。ひとつひとつの地点を通過する事に必死です。しかし、幾つかの「間=道のり」を組み合せればいつか頂上に到達するという事実を知っていれば登山は格段に楽になります。そして、今まさに体験中の「間=登山」ですら、“次”の機会には武器になる。どの「間=経験」を組み合せれば「その山の頂上に辿り着けるか」も「その次の山への挑戦に役立つか」も見えてくるのではないでしょうか。

そして、もうひとつ。「間」が重要だからこそ僕は「好きなことしかやらない」んです。「間」が意味を持たなくなるのは、途中で諦めるとき。「好きなこと」なら途中で止めずにすむじゃないですか。やりきれてしまうパワーが生まれます。結果、たとえ小さくても一つ一つ間違いなく積み上がります。僕の様に何も持たない人間にはそれが何より重要。そして自分の「好きなこと」なら他人の意見がどうであれ、自信を持っていられます。

例えば、人と人との「間=因縁」もそう。営業機能を持たず、紹介制で仕事を得る当社「ドレスイング」にとっては重要な要素の一つです。それも元を辿れば僕の「デザイン携帯電話“好き”」に行き着きます(笑)。

会社員時代にNOKIA7600という携帯を使っていました。とにかくデザインがかわいかった。でも設定や操作がやたら難しい。ファッション業界や芸能人の友だちもこぞって買っていました。でも複雑過ぎて設定から進めないんですよ。仕事柄、デジタル製品に詳しかった僕に、相談が集中しました。

インドネシアからアンオフィシャルの外装パーツなどを仕入れてカスタマイズしたりしていたので目立ったらしいです(笑)。そして聞いてくるのも僕の「好きな人」。好きなファッション業界の人だったり、好きなミュージシャンだったり。そこから「VJ(クラブで映像を流す仕事)をやらないか」というお誘いを頂いたり、VJをはじめてみたら二回目で小室哲哉さんのVJをやることになったり、小事が大事になって行きました。でも僕からするとただ「好き」が連鎖し、可能性や仕事につながっただけなんです。

3. 学生時代、将来は何になりたいと考えていましたか?

お茶の水博士です(笑)大学では、化学を専攻し白衣を着て研究をしていました。周りの化学を専攻した学生は、製薬会社の営業や医薬品の情報に精通したMRなどの職に就いていました。僕は理系を志した時点から、自分で自分の好きな研究をして世の中に価値提案をするイメージを持っていました。だから博士(笑)。

三つ子の魂百まで」という言葉があります。まさにそんな感じです。大好きだったアトムを作ったお茶の水博士みたいになりたかった。そして厳密に言うとアトムを作ったのは天馬博士なんですよね(笑)。でもアトムをアトム然として世の中に展開した「博士」はお茶の水博士な気がする。これまた非常にマーケティング好きな思考で、「因縁=間」でもあるなと。

就職活動中は、あまりに「好きじゃないこと」を求められている現実に対応しきれなくて、面接の途中で帰ったりしていました。しかし、「好きじゃないことを求められる現実なんかに順応しなくて良かった」。30代でそう言えるようになると学生時代の自分に教えてやりたいです。

「好き」のパワーってすごい。「好き」を追い求めたお陰で、師匠であるテレビプロデューサーのかた、孫正義さん、一生付き合って行くであろうソフトバンクアカデミアのメンバー、そして大好きなファッション、美容業界の方々と出会うことが出来ました。特に最近は子供の頃の夢がどんどん叶っています。ブログなどにも書いていますが、デビュー作からファンだった荒木飛呂彦さんとイタリアに御一緒したりする御縁も頂いています。

4. 最後にナカヤマン。さんが考える「転職を考える時に重要な3項目」を教えて頂けますか?

① 二年後のイメージができるか?

② 目的は明確か?

③ 最低限の保険はあるか?

①と②にイエスと言えたなら、転職は成功するでしょう。①は一年だと焦り過ぎ、三年だと余裕を持ち過ぎかなと。②は「目的無き所に満足無し」ですね。①と②併せて「目的達成の為のスケジューリングが出来ているか」と同義です。③は独立やベンチャーへの転職など、リスクが高い場合に重要。例えば、最低限の収入があるかではなくて、収入がない時に誰かに奢ってもらえるかどうか、くらいのレベルです。前者は僕からすれば保険掛かり過ぎ。収入なんて無くても死にません。

転職は、百車線くらいの道路をイメージすると分かり易いのではないでしょうか。「給料が少ない」「環境が合わない」などは、どの車線を選ぶかを論じている気がします。選択肢は沢山ある。特に渋滞している時などは、どの車線が良いか気になってしまう。でも車線変更くらいで目的地への到着時刻は劇的に変わりません(笑)。論じるべきは「車線」ではなく「目的地」ではないでしょうか。「目的地」を途中で変えても良いんですよ、たとえ人生でも。

先ほどクリエイティブディレクターやデジタルストラジストなど、肩書きを「便宜的に用いる記号」だと言いました。どちらにしても「戦略を軸にしたクリエイション」であり、僕の「好きなこと」が沢山つまっています。そこには一貫性があるのですが、人生を通して当てはまる肩書きは存在しない。そもそも一人一人違うはずの「好きなこと」が、前もって肩書きとして用意されている訳がないですよね。だから作らないと。そう言う意味で僕の肩書きは「ナカヤマン。」なのだと思います。

「ブレることは無いですか?」と良く聞かれます。もちろんブレます。かっこいい人が周りに居過ぎて日々ブレまくりです(笑)。でもそれが「ブレ」なのか「自身の変化」なのかは、自身に「好きかどうか」を問いかければ分かる。

孫正義さんのお話を聞く度に憧れます。大きい会社を経営する、大きなお金を動かす、世の中を変えている感覚すらある。とにかくかっこいい。とにかく魅力的です。「僕もそっちの道を…」とか「自分のやっている事って…」と悩んだ回数は数知れません。でも頭の中でシミュレートすると「間」が埋まらない。そして「好き」だからやりたいんじゃなくて、「かっこいい」から憧れているだけだと気付きました。孫さんのような状態“も“、体験してみたいだけだったのだと。それ以降、孫さんに失礼にあたるので、それに関してブレるのをやめました。

誰もが何十年と仕事をすることになります。だからこそ、流されない「自分の判断基準」が重要です。僕の場合は「好きなことしかやらない」。それに準じて人生と、仕事と対峙していれば、自分のやるべき事が見える様にもなります。視野が広がる。可能なことが増えてくる。不可能なことを可能にする手順すら見えてくる。あるいは見えなくても突っ込んで大丈夫だろう、という楽観も手に入ります(笑)。今後も僕の人生を以て証明しますが、マジメにやっていれば、手を抜かずにやっていれば、「好きなこと」しかやらなくても、悪くない人生が待っているものですよ。

ナカヤマン。さんの最近のお仕事、著書など

【dr55ng Official Site】
同氏の仕事はもちろん、工夫を凝らしたサイトから感性にも触れられる。ドレスイングが得意なスマホビューは秀逸。

【美的子LINEスタンプ】
同氏が、雑誌「美的」のキャラクターを命名、コラボ企画立案から戦略までを担当。平均を上回るDL、利用回数を達成。

【touchMe x Instagram】
マークスタイラー社主催の「touchMe」のレポート施策。Instagramを使い、ネット上で会場の“臨場感”を再現した。

【CHANEL】
シャネルのノエルキャンペーンサイト。スマホ限定で、先行してティザーサイト公開を、11月22日から本サイトが公開。

【NUMERO 掲載誌発売】
ガールズマーケット、ITに精通した同氏が、スマホやSNSを使いこなしたい女性に、6ページでわかりやすく解説する。(11/28発売号掲載)

Text by Yuzuru Yamakawa, Image by Hannah Eto